プレッシャーはないほうがいいのか?
プレッシャーの意味を理解する
試合や練習で感じるプレッシャー。「プレッシャーがあるからうまくいかない」など悪く捉えられがちですが、本当にそうなのでしょうか?プそんな疑問に迫ってみたいと思います。
そもそも「プレッシャー」とは何か?
試合の大事な場面や練習中をはじめ、普段の生活でもプレッシャーを感じることは多いかと思います。
「ここは失敗できない、失敗したらどうしよう」
「うまく対応したいけど、予想外のことが起きたらどうしよう」
など、考え始めるとどんどん沼にハマってしまうこともしばしば。
そんなプレッシャーですが、まずはどんな意味なのかを確認してみましょう。
「プレッシャー」とは
圧力。特に、精神的な重圧。
https://sakura-paris.org/dict/明鏡国語辞典/content/5486_1698
日々感じているプレッシャーもこの言葉の意味そのものではないでしょうか。
このプレッシャーという言葉は、もともとは物理学の世界で使われており、心理学の世界では1980年代から使われ始めたと言われています。心理学の世界は主に以下で定義されています。
優れたパフォーマンスを発揮しなければならないという心理を刺激する外的要因
社会心理学者Baumeisterにて定義された「心理的重圧」より
スポーツでは観客が見ている中で競技を行う、賞金やタイトルがかかっている、スポンサーやサポーターなどの評価といった外的要因があります。それによって「自分自身が優れたパフォーマンスを発揮しなければならない」というプレッシャーを感じるというのがまさにこれかと思います。
プレッシャーはよくないことなのか?
そんなプレッシャーがかかる場面で、よく言われることは
- プレッシャーなんてなければいいのに
- プレッシャーのせいで普段どおりの動きができない
などといったことではないでしょうか。そんなプレッシャーをもう少し紐解いてみたいと思います。
プレッシャーを感じると体の中ではノルアドレナリン・ドーパミンが分泌されます。ノルアドレナリンが放出されると、交感神経が優位になり、血圧が上昇したり、脈拍が上がるなどの症状が現れます。よくこういった症状を「抑えたい」と思うことが多いかもしれないですが、実はこれは覚醒状態に入ることを意味しています。具体的には、筋肉に力が入り、感覚が研ぎ澄まされ、体が機敏に動くなど、パフォーマンスを発揮しやすくなります。
しかし、プレッシャーはいいことばかりではありません。プレッシャーを感じる度合いによって、いいようにも悪いようにも作用します。
逆にプレッシャーを過度に感じすぎた場合、覚醒状態を通り越して機能低下になっていきます。先ほどのノルアドレナリンやドーパミンが過剰に分泌された状態になり、脳の中にある前頭前野の活動が弱まっていきます。前頭前野は「考える」・「記憶する」・「感情をコントロールする」・「判断する」といった役割を担っていますが、これが正常に機能しなくなり、不安を感じたりするのです。プレッシャーを強く感じる場面は、言い換えるとプレッシャーによってストレスを感じているとも言えるかもしれません。
プレッシャーの強弱がパフォーマンスに与える影響はヤーキズ・ドットソンの法則で確認することができます。
これまで記述したとおり、適度なプレッシャーは優れたパフォーマンスに影響する一方、過度なプレッシャーはパフォーマンスの低下につながります。そしてさらに、プレッシャーがかからなすぎても優れたパフォーマンスにつながりずらいということもわかります。
「プレッシャーはなければいいのに」というのは、実はあまりよくないということがわかりました。
「プレッシャーがきつい」と感じたら
大事な場面で感じるプレッシャーは、感じる量によっていいほうにも悪いほうにも作用することがわかりました。場慣れすることなどによって、ある程度プレッシャーを感じにくくすることはできると思います。
もし「プレッシャーがきついなぁ」と感じたら、1つご自身に問いかけてみたいただきたいのがコチラです。
そのプレッシャーは感じる必要があるのか?
プレッシャーを感じる場面は、主にこれから起こることに対して感じるはずです。未来のことは誰にもわかりません。いわば幻想に対して自分が不安になっている状態ともいえます。しかしながら、自分自身がこれから行うのですから、自分次第です。
これまでのきつい練習を乗り越えたことを思い出したり、「どうしたら乗り越えられるだろうか」とポジティブな問いかけをしてみることでうまく対処できるのではないかと考えています。
また、メンタルトレーニングなどでは呼吸法を変えたりするといった対処方法もあります。そういったものを取り入れつつ、これまでお話したプレッシャーの本質を理解しておくと、いざというときに少しラクな気持ちになるかもしれません。
皆様の競技生活に何かお役立てられたら幸いです。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。
スポーツメンタルコーチ 中田大介