女子ゴルフQTに見る選手の言葉とメンタル

過酷な戦いの中にある選手の言葉

DAISUKE

今シーズンの女子ゴルフのツアーが終了したと同時にもう1つの戦いがありました。来年のツアー前半の参戦をかけたQT(クォリファイングトーナメント)です。ツアーの試合とは何もかも違うといっても過言ではないと言えます。その中で選手の言葉などからメンタル面への影響などに迫ってみたいと思います。

女子ゴルフの現状

今回は特に女子ゴルフという特定の競技について考察していきます。

女子ゴルフは毎年3月から11月までほぼ毎週、全国各地で試合があります。その間、シード権と呼ばれる試合の出場権を持った選手は以下のような流れで1週間を過ごします。

月曜日に試合会場へ移動

火曜日・水曜日は練習ラウンドとして試合会場で練習

木曜日は大会主催や関係者の方を交えたプロアマ

金曜日〜日曜日は試合でラウンド(金・土が予選ラウンド、日が決勝ラウンド)

4日間大会になると木曜日から試合が始まりますが、こうしてみてみると、移動日の月曜日以外はほぼ毎日ゴルフを行っていることになります。これが3月から11月までほぼ毎週のように続いていくことを考えると、過酷な競技とも言えるのではないでしょうか。

QTは来年に向けた負けられない戦い

そのツアー日程が全て終了すと行われるのがQT(クォリファイングトーナメント)です。これは来シーズンの試合の出場権(シード権)をかけて1stQT、FinalQTと4日間ずつ計8日間を戦い抜き、上位35〜40位くらいまでが来シーズン前半戦のシード権を獲得できます。

そのシード権をめぐって、プロになりたてのルーキー、試合で実力を発揮できずに燻っている選手、さらには長年シード権を持ち活躍していた誰もが知るようなベテラン選手が混じって戦います。

特に11月までツアー参戦していた選手はこれまでの疲労が蓄積されている中で最後の力を振り絞ってのQT。さらにこれまで試合で良い成績を残せていない状況です。いいイメージを持って臨むことは簡単ではないかもしれません。

さらに通常の試合とは異なる点があります。

  • 通常の試合は「勝ちたい・優勝したい」という前向きな願望
  • QTは「絶対に負けられない」という追い込まれた感情
  • ギャラリーがいないため、静寂の中でプレー
  • 1打でもミスが許されないというプレッシャープレッシャーのせいで普段どおりの動きができない

1打でもミスが許されないのは試合でも同じかもしれませんが、QTはさらに重みが違います。同じスコアで並んでも最終順位が“タイ”にはならず、必ずすべての選手に順位がつきます。 4日間72ホールのストローク方式で、同じスコアで並んだ場合は(1)最終ラウンドのスコア、(2)第3ラウンドのスコア、(3)第2ラウンドのスコア、(4)最終ラウンドの18番からのカウントバック、の順番でランクが決定するため、より1打に重みが出てきます。

印象的だった選手の言葉

この過酷なQT、出場した選手は口を揃えて「2度と行きたくない」と言うほどです。たしかにこれまでの内容を踏まえると、選手が感じるプレッシャーは予想を遥かに超える極限のものではないでしょうか。

そんな中、先日行われたFinalQTでの選手の言葉から印象的なものがありました。

6位でフィニッシュした木戸愛選手はこのようなコメントをされていました。

「日毎に風と仲良くなってきたような気もしている。」

https://sports.yahoo.co.jp/official/detail/2023113000084-spnaviow

ゴルフは風などの自然と向き合う競技でもあります。その中で風はスコアに影響する要因の1つ。普段なら強く吹く風に対して嫌悪感を感じることも多いのではないかと思います。その風と仲良くなってきたと思うことは、ある意味では味方につけることができるのではないかと考えられます。

仲良くなるには、まずは自分が受け入れなければ絶対に仲良くなれません。自分がキライなら、いくら相手が好意を寄せていても意味がありません。

そのためにはまずは風が強いという状況を受け入れ、そしてその上で自分には何ができるのかを考える。素晴らしい結果に結びついた1つの要因かもしれません。

また、QTに出場を迷いながらも出場を決めた渡邉彩香選手は

「私は、なんだかんだ言って好きなんだなと。今回は“好きなゴルフ”をやりに来ました」

https://news.golfdigest.co.jp/news/jlpga/article/162867/1/

今一度ゴルフと向き合い、自分自身の正直な気持ちに気づいた一言なのではないでしょうか。もともと好きで始めた競技、レベルが上がり、賞金やスポンサーなどいろいろな要素が出てくることで、本来の愉しみを忘れてしまうことはあると思います。そうしたときに、原点に立ち帰ることで競技に対するモチベーションを上げることができるのではないかと考えます。

また、長年タッグを組んだキャディの川口淳氏からは

「散歩のつもりで回ればいい。散歩に順位はつかないじゃん。勝った、負けたなんてないじゃん」

https://news.golfdigest.co.jp/news/jlpga/article/162867/1/

と声をかけられたそうです。

1打が順位を左右するQTは通常の試合よりも1打に一喜一憂することが多くなるのではないでしょうか。そんな状況を回避するために、QTに対する捉え方をうまく変えることで、程よいプレッシャーの中で戦えるような計らいではないかなと考えます。もし同じように極度のプレッシャーを感じてしまうような場面では、このように少し捉え方を変えてみるもの良いのではないでしょうか。

さいごに

今回は初めて特定の競技にフォーカスしてブログを書いてみました。

選手の言葉からの考察では、ゴルフに限らず様々なスポーツでも通ずるところがあるのではないでしょうか。みなさまの競技人生に何かお役に立てられれば幸いです。

最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。

スポーツメンタルコーチ 中田大介